
クンブメーラ ― 世界最大の平和的宗教集会
クンブメーラは、ヒンドゥー教最大の宗教行事の一つであり、世界最大級の平和的な集会として国際的にも知られています。この祭典では、数千万ものヒンドゥー教徒たちが神聖な川での「沐浴」を通じて、罪の浄化と霊的な向上を願い、巡礼の旅に出ます。
クンブメーラとは?
「クンブ」とはサンスクリット語で壺を意味し、「メーラ」は集まり、祭りを意味します。その名の通り、クンブ・メーラは神話に基づく“神の壺”にまつわる壮大な信仰行事です。この祭りは、インド神話「乳海攪拌」の物語に由来します。不死の霊薬「アムリタ」をめぐる神々とアスラ(悪魔)との争いの中で、アムリタの入った壺から地上に滴り落ちた場所が、クンブ・メーラの開催地とされています。
開催地と周期
クンブ・メーラはインドの4つの聖地で、約3年ごとに順番に開催されます。それぞれの都市では12年に一度の開催となります。
都市名 沐浴が行われる川
ハリドワール | ガンジス川 |
プラヤグラージ(旧イラーハーバード) | ガンジス川、ヤムナー川、サラスヴァティ川の合流地点(トリヴェーニ・サンガム) |
ナーシク | ゴーダーヴァリ川 |
ウッジャイン | シプラ川 |
また、ウッジャインでのクンブ・メーラはシンハスタと呼ばれています。
ハリドワールとプラヤグラージでは6年ごとに「アーダ・クンブ・メーラ(半クンブ)」も開催されます。
クンブ・メーラの規模と重要性
クンブ・メーラは、ヒンドゥー教徒にとって非常に神聖な巡礼の一つであり、そのスケールは世界最大級です。
主な行事と儀式
シュナーン(Shahi Snan) ― 王の沐浴
もっとも重要な儀式のひとつで、特定の吉兆日(天文学的に決定)に合わせて行われます。13の「アカーダ(Akhara、ヒンドゥー修行者の宗派・道場)」の導師やナガー・サドゥたちが、王のように行列を組んで神聖な川へと進み、沐浴を行います。
マウニ・アマーヴァスヤ(Mauni Amavasya)
この日は「沈黙の日」とされ、特に功徳が大きいとされるため、最も多くの巡礼者が訪れます。2025年のプラヤグラージではこの日に6億6000万が参加しました。
巡礼者の様子と文化的意義
祭りの期間中、全インドからはもちろん、世界各国のヒンドゥー教徒や観光客、研究者がこの地に集まり、町全体が霊性と祝祭の雰囲気に包まれます。伝統衣装をまとった巡礼者、裸で灰を塗ったサドゥ、祈りの声、儀式の炎、チャントの響き――それらすべてがクンブ・メーラを壮大な「生きた文化遺産」にしています。
クンブ・メーラは、ただの宗教イベントではありません。それは精神性、文化、信仰、歴史が融合した、「人類の心の源泉」とも言えるような祭典です。圧倒的な人の波と祈りの光景を前にすれば、自らの信仰を超えた何か神聖なものを感じずにはいられません。
人生に一度は訪れたい、魂を揺さぶるスピリチュアルな旅。それが、クンブ・メーラなのです。
クンブメーラは2028年にウッジャインで行います
クンブメーラ(シンハスタ)について【ウッジャイン編】
ウッジャインで行われるクンブメーラは、特に「シンハスタ・クンブメーラ」と呼ばれ、12年に一度、木星が獅子座(シンハ)に入る時期に開催されます。これは他の3都市でのクンブメーラとは異なる、天文学的な配置に基づく非常に特別な巡礼祭です。
シンハスタの開催地であるウッジャインは、古代から聖地として知られ、マハーカール寺院などの重要なヒンドゥー教寺院があります。巡礼者たちは、神聖なシプラ川で沐浴を行い、過去の罪を清め、精神的な解脱を願います。
クンブ・メーラとウッジャインに行うシンハスタの違いは?
「クンブ・メーラ」と「シンハスタは非常に似ており、しばしば混同されることもありますが、天文学的な基準や開催地の呼称において明確な違いがあります。
項目 | クンブ・メーラ(Kumbh Mela) | シンハスタ(Simhastha) |
意味 | 「クンブ」は「壺」・「メーラ」は「集まり」 =アムリタ(不死の霊薬)の壺に由来する巡礼祭 | 「シンハ」は「獅子座」・「アスタ」は「在る」 =木星が獅子座に入る時期の特定のクンブ・メーラ |
開催頻度 | 12年ごと(4都市で持ち回り) 6年ごとのアーダ・クンブもあり | 12年ごと(ウッジャインでのみ開催) |
開催地 | ハリドワール、プラヤグラージ(旧イラーハーバード)、ナーシク、ウッジャイン | ウッジャイン限定 |
天文的基準 | 開催地ごとに異なるが、木星・太陽・月の特定の配置に基づく | 太陽が牡羊座(メーシャ)、木星が獅子座(シンハ)にある時 |
主要な川 | 開催地によって異なる(例:ガンジス川、ヤムナー川など) | シプラ川(Shipra River) |
別名・位置付け | 総称として「クンブ・メーラ」 | ウッジャインで行われるクンブ・メーラの中での「特殊名」 |
シンハスタは「クンブ・メーラ」の一種?
シンハスタはクンブ・メーラの一形態とされています。
つまり、「クンブ・メーラ」は全体を指す総称であり、その中の一つが「ウッジャインで開催されるシンハスタ」です。ただし、開催のきっかけとなる天体配置(星座)の違いから、特別に「シンハスタ」と呼ばれるのです。「クンブ・メーラ」はヒンドゥー教最大の巡礼祭。
その中でも、ウッジャインで、木星が獅子座にある時期に開かれる特別なクンブ・メーラが「シンハスタ」と呼ばれる。
日程と開催地の一覧
年 | イラーハーバード | ナシク | ウジャイン | ハリドワール |
1983 | アーダ・クンブ・メーラ | – | – | – |
1989 | プルナ・クンブ・メーラ | – | – | – |
1991 | – | クンブ・メーラ | – | – |
1992 | – | – | クンブ・メーラ | アーダ・クンブ・メーラ |
1995 | アーダ・クンブ・メーラ | – | – | – |
1998 | – | – | – | クンブ・メーラ |
2001 | プルナ・クンブ・メーラ | – | – | – |
2003 | – | クンブ・メーラ | – | – |
2004 | – | – | シンハスタ | アーダ・クンブ・メーラ |
2007 | アーダ・クンブ・メーラ | – | – | – |
2010 | – | – | – | クンブ・メーラ |
2013 | マハー・クンブ・メーラ | – | – | – |
2015 | – | クンブ・メーラ | – | – |
2016 | – | – | シンハスタ | アーダ・クンブ・メーラ |
2019 | アーダ・クンブ・メーラ | – | – | – |
2022 | – | – | – | クンブ・メーラ |
2025 | – | – | – | |
2027 |
| クンブメーラ |
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2028 |
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| シンハスタ | アーダ・クンブ・メーラ |